約500年前から、人間は占いが大好きだった!?

編:……というわけで、説話社、思いきって占い雑誌を立ち上げることにしました。
鏡:びっくりですね(笑)。いや、いよいよですね。
編:ええ……。そこで、鏡先生に「占い雑誌」の歴史、さらには世界事情についてお話を伺えたらと思っています。そもそも占い「雑誌」というのはどれくらい昔からあるんでしょう?
鏡:それこそ、16世紀くらいからありますよ。なんたってノストラダムスはそれで有名になったんですから。雑誌というかアルマナック(年鑑の暦)ですけど。ちなみに17世紀に創刊されたイギリスの『Old Moore's Almanack』は、今もずっと続いています。日本で言うところの『高島暦』のようなものですよね。その年の予言とか、有名人の占いとか、毎日の運勢とか、「あなたはこんな性格ですよ」とか……。
編:今と全然、変わらないんですね。
鏡:変わらないんですよ(笑)。しかも当時の印刷物としては聖書に匹敵するくらいの部数が出ていたわけですから、他のどのジャンルの本よりも「売れていた」んです。
編:今から500年前に生きていた人たちも、今の私たちと同じように未来に不安を抱いていたわけですか?
鏡:いや、今よりもっと不安だったと思いますよ。なんせ政情が不安定だったから。この先がどうなるかまったくわからない。だから世の中的なこと、政情を占ったり、社会全体のことを占うものが多かったですね。どちらかというと「かわら版」のような役割ですよね。

占いビジネスの「原型」は100年前には存在していた!


鏡:その後、海外で言うと、イギリスの雑誌『Modern Astrology』が1901年に創刊されました。近代占星学の父と呼ばれるアラン・レオが出した、完全にガチ占星術の雑誌です。この雑誌の連載がまとまって、後の占星術の教科書になっていくんです。
編:「連載をまとめて書籍化」という流れはこの時代からあるんですね。当時、載っていたのはどういう記事だったんですか?
鏡:太陽星座占い、月星座占い……あとはその当時の事件のホロスコープを読み解く記事とか。あ、あと「1シリングホロスコープ」って言って、購読すると簡単なホロスコープを読んでもらえる券がついていたらしいんですよ。
編:今でいう応募者全員サービスみたいなことですかね。
鏡:うん。これが結構、大ヒットしたんです。最初は1人ひとりのチャートをちゃんと読んでいたみたいなんですけど、あまりにも大変だということで、誰かが途中で気づいたんですよ。「……結構、同じこと書いてない? 俺ら」って(笑)。
それで太陽牡羊座、太陽牡牛座……とテキストをわけてファイリングして送ればいいじゃん、と。これが今の「コンピューター占い」の始まりですよね。
編:それが今では「ネット占い」になっているわけですね。現代の占い産業の原型は、100年前には存在していた、と。
鏡:あとはアメリカに『Dell Horoscope』という雑誌があって、結構本格的な占星術の記事があったり。例えば今ではだいぶ浸透した「スーパームーン」という言葉は、占星術家リチャード・ノルが1979年にこの雑誌に発表したのが最初、と言われています。『American Astrology』という雑誌では、サビアン占星術でおなじみ、ディーン・ルディアが筆を振るっていたみたいですよ。これは一般向けとはいえ本格占星術の雑誌ですね。
日本で僕も大変お世話になった『elfin』(学研※1996年休刊)もとても専門性の高い雑誌でしたが、もっと占星術に特化したものでした。今のアメリカの『The Mountain Astrologer』はさらに占星術家のための専門誌ですね。あと、思い出されるのは1980年代から90年ごろに英国で出ていた『Sphinx』です。これは占いではありませんが、詩や文学、美術、心理学、そしてその関連領域として占いも入っていた、究めてハイブロウなもの。こういうのは本当に欲しい。今、英国でひっそりと出ている『ABRAXAS』という美しいジャーナルは、魔術とアートを融合したようなものでほんと、かっこいい。こういうのはやはり日本との格差を感じます。
編:こうした占星術をいろいろな側面から紹介する媒体が普及してきたのは、なぜでしょう?
鏡:占星術を学ぶことが1つの趣味として成り立ってきたんじゃないですかね。だって、占星術の勉強をするの、なんだかんだいって楽しいじゃないですか(笑)。



鏡:現代ではこういうのもありますね。イギリスの『Prediction』(Churchill Publishing 写真中央)これはハロウィンスペシャル号ですけど。
編:表紙がおしゃれ! かぼちゃ畑でモデルさんがだいぶ肩出してますね……。この他、タイトルを見ると「アストラルトラベル」「アーキエンジェル アルケミー」とか、ちょっとスピなキーワードが並びますね。こちらの『Body Mind Sprit』(WATKINS BOOKS 写真左)は……。
鏡:これはもうちょっと精神世界よりですね。思想とか自己啓発とか……。この『ASTROLOG』(Wellspring 写真右)はちゃんと占いをやっている感がありますね。ムーンフェイズを算出するCD-ROMもついている。



編:ページをめくってみると……「DATE WITH A DRAGON」はドラゴンやフランケンシュタインなどの映画や神話を絡めつつ、ドラゴンヘッド&テイルを特集していますね。「Unleashing Creativity」特集では5ハウスのサインと、その支配星が何ハウスに入っているかで診断。……確かに本格的です!

「2つの世界」を行き来できる占い師とは




鏡:日本ではやっぱり『マイバースデイ』(実業之日本社 ※2006年休刊 写真中央)の存在が大きいですよね。それ以前は日本にも「年鑑」、暦のようなものはあったんですけど。占いの雑誌、しかも「少女向け」というのが画期的で。海外のどこにも例がないんですよ。
編:それが40万部の爆発的ヒットとなります。大人でも、占い愛好家でもなく「10代の女の子たち」が占いにハマったのはなぜだと思いますか?
鏡:やはりロマンティックな年頃だからじゃないですか? 『マイバースデイ』って、その世代の女の子全員が読んでいた雑誌ではないと思うんですよ。クラスでもちょっとシャイな女の子たち。シャイじゃない女の子は『ポップティーン』(角川春樹事務所)とかを読んでいたと思う(笑)。男子校だったから、どちらも僕の周りにはいなかったですけど。
編:“シャイな子”、ってどういう子なんでしょう。
鏡:何だろう……、ちゃんと「考える人たち」ということなんじゃないかな。世間の価値観をただ盲信するのではなく「これってどうなんだろう」「自分はどうだろう」と考えたい人が読んでいた、というイメージですかね。
編:そういう人たちが年齢を重ねるにつれ、『elfin』(写真右)や『ミスティ』(実業之日本社 ※2011年休刊 写真左)へと移行していくわけですね。ちなみに『ミスティ』は占いをベースにしつつも、時に「魔女ガール」を押し出したりしていました。魔女クッキングとかおまじないハンドメイドとか……。
鏡:そうそう! こういうのが今の占い系クラフト女子につながっていくわけですよね。
編:今は主婦の方の副業としても、占い師が人気なんだそうです。
鏡:……すごい世の中ですね。
編:そ、それはどういうことですか。
鏡:やっぱり、占い“読者”と“占い師”は、また別なんですよ。
編:占い読者と、占い師を分けるものって何ですか?
鏡:なんだろう。……いっちゃってる感?
編:えええええ!? どういうところがですか!?
鏡:ある意味、“常識外”な部分を持っていないと、占いはできないと思うんですよ。
編:えっ!「今週、いよいよ木星が動くね~」なんて言っているのは常識外?
鏡:うん。惑星が動くことは、この社会とは関係ないから。
編:……そうすると、説話社の人間は皆、常識外ということに……(汗)。
鏡:そうですね(笑)。でも一応、占いを“商品”として、それを介して社会のマーケットとつながっているわけだから。
編:ガチで占いの世界を生きているかどうか、ということですか? それができる人が、占い師に向いているということ?
鏡:本気で常識外の世界を生きられれば、なれるかもしれない。でもそういう人は仕事としては、なかなか成立しにくいんですよ。
編:星の世界だけを生きていれば、社会生活が成り立たない……例えば「水星逆行中だから、締め切り破ります」「○座とは相性が悪いから部署異動させてください」とか言い出したら大変ですもんね。かといってビジネスとしてだけ占いをやっていては、そこに人を惹きつける魅力が生まれなかったり……。では常識感覚を持ちながらも、常識を突き抜けられる人が占い師に向いているということですか?
鏡:2つの視点を持っている、ということかな。「walkers between the world.」、2つの世界を行き来する、というか。
編:普通の社会と、星の世界を行き来できるようなバランス感覚が大事だということですね。その2つの世界の両方を歩ける占い師さんが出てくるような『マイカレンダー』になったらいいですね。

牡羊座の天王星!? 世の中の“底が抜けた感”の正体

鏡:でも社会性とか常識は大事なんだけど、……最近、底が抜けちゃった感じがしません?
編:“底”って何の底ですか!?
鏡:常識の底。今までの常識の底。
編:確かに、今までの常識では推し量れないことが出てきていますよね。今までなら「こうなるだろう」と思っていたものが、そうならなくなっている。
鏡:トランプが大統領になった頃からですかね。「そういう本音、言っちゃいけないじゃん」っていうのを露骨に出すようになっているというか。SNSでも「自分はこう思うけど、相手はどう思うかな」ということを考えないまま、パッと何かを言っちゃっている。
編:「自分はこう! だからこの人は間違っている!」という感じですか?
鏡:そう。白黒つけすぎ、というか。そういう意味では、占いって「世の中にはいろんな人がいるね」っていう話なんですよ。だから星座は12あるし、干支だって12ある。人間はあなただけじゃなく、いろいろなキャラクターの人がいるよ、ということを教えているんです。
編:少なくとも12通りの人がいるんだから、あなたの価値観と私の価値観は違っていてもいいんだよ、ということですね。そういう意味では、占いの考え方は世界に平和をもたらす……かもしれないですかね?
鏡:本当はね(笑)。しょっちゅう派閥争いもしているけど。でも基本的にはいい人たちが多いと思う、この業界。
編:占い業界はいい人が多い!!(笑)それは本当にいいことですね。
鏡:中には「これでお金をだまし取ろう」みたいな邪悪な人もいるかもしれないんだけど、本当に占いが好きで占いに携わっている人は、ロマンティックなものが好きな人たちだから。
編:ちなみに周りを顧みず、自分の思っていることをガツガツ言いすぎるのは、約7年間続いた、天王星in牡羊座期の影響だったりするんでしょうか。
鏡:確かに、そうかもしれない。皆、言いたい放題なんですよ。「これを言ったらどうなるか」という想像力が働かなくなってきているのかもしれない。

これからの時代、何が「価値」を持つのか

編:そんな天王星が2018年の5月に牡牛座に入りました。これから世の中はどうなってきますか?
鏡:牡牛座だから……お金の価値観が変化する。「そもそも、お金って何?」と、皆が考え始めたり、新しいお金の仕組みを作ろうという動きが生まれたり。
編:そんなこれからの時代は、いったい何が価値を持ち始めるんでしょうか?
鏡:それこそバーチャルなお金なのかもしれないし。情報かもしれないし……。いずれにしろ、自分が見ている情報だけが「世界」だと思ってしまわないようにしないといけないですよね。情報を手に入れるのが簡単になった分、意識していないと自分の好きな情報しか集まってこなくなるから。それで違う立場、違う考え方の人間がいる、ということがわからなくなってしまうのかもしれない。
編:ではこれから、皆どんな情報にお金を投じるようになるのでしょうか。
というのも、今はツイッターなどで、おもしろいつぶやきをしている占い師さんも多いじゃないですか。SNSのほうが格段に表現の自由度も高いですし。そういう時代に「雑誌」に載っているべき情報って何なんだろう? と思うんです。

鏡:何だろう……編集の目が入ることでのクオリティの担保ですかね。あとはやっぱり個人単位だと、続けるのが難しいような気がする。雑誌、もしくはwebでもいいんだけど、何らかの「箱」があることが重要で。この膨大な情報が氾濫している世の中で「容器」があるからこそ、流れて行ってしまわずに、ちゃんと形になるものってあると思うんですよ。逆に言えば、お一人でずっと長年続けておられる石井ゆかりさんの努力はすごいと思います。優れたクオリティをキープしつつ、続けることのすごさを感じますよね。
編:本当ですね。何らかの方針に基づいて情報をピックアップして編んで、集めたものを入れる「器」。それがあることで形づくられる“何か”があるのかもしれません。
『マイカレ』という器に、いったいどんな情報が詰められていくのか……。それは今後に乞うご期待、ということで……!(汗)

鏡:「器」という言葉で思い出したんですが、これって錬金術の坩堝とか容器のようなものかもしれません。様々な物質を入れて、ゆっくりと読者が暖かい火、熱を送る。その熱は激しすぎても冷たすぎてもいけない。激しすぎると容器が壊れ、あふれるし、冷たすぎると何も起こらない。適切な温度で時間をかけて読者のエネルギーと書き手の素材が反応し、雑誌という「器」の中で錬成されていく。そうした中から素敵なものが生まれていく……。そんな「容器」の誕生を心から願っています。
編:素晴らしいまとめのお言葉、ありがとうございます!(涙)