◆月星座は我々の何を表しているのか。

―愛先生と言えば昨年末にブログで発表された「月星座は、その人にないもの、欠損している要素を示す」という持論を展開されて、SNS上で話題になりました。
感情や幼い頃からの習慣や経験を表す月星座は、ホロスコープの中でも重要なポイントと考えられていますが、それが「本人に欠けている要素」であり、「エネルギーを奪う原因となっている」というのは、どういうことなのでしょう? 


愛:生命力があるのは、やっぱり太陽なんだよね。月からはもらえない。

エミール:太陽はやはり重要ですね。それは東洋の占術においてもそう。四柱推命では、年柱・月柱・日柱・時柱という四つの柱で命式を作るのですが、自分のコアを表すのは月柱(生まれた月の干支)で、ここが中心星となるんです。そして四つの柱のうち、季節感があるのは月柱だけ。春夏秋冬、季節によって太陽のエネルギーが変わるんです。つまり月柱がその人の太陽のありよう、その人のエネルギーの源を表していると言えるんです。だから太陽が最優先なんです。

愛:占星術においても本来はそうなんだけど、最近は皆、月は他の星と同等くらいに思っているよね。

エミール:そうね。私も占星術の勉強を始めた時に「太陽は特別な存在なんだ」と、最初にものすごく教わりましたね。10天体の中でも別格。だって地球上のすべてのものは、太陽の光を反射しているわけだから。

―それを私たちは色として認識しているわけですね。なんというか「太陽星座占い」が当たり前になりすぎていて、ちょっと「他の星から見た自分」が刺激的に感じられるのかもしれないですね。

愛:太陽は自ら獲得していかなければならない星だから、何もしていない人はその影響がわかりづらいんですよ。逆に月は奪われているエネルギーだから、実感としてわかる。

―だから月星座は「当たる」という実感を持ちやすかったり、月にまつわることに敏感に反応してしまうわけですね。そういう意味では我々は太陽を置き去りにしているままというか、本当の意味では太陽星座をまだ獲得できていないのかもしれませんね。

愛:してないよ、ほとんどの人は。太陽の意識でやったことは、おもしろいし、長続きするし、苦労しない。だから自分の太陽星座と照らし合わせて、改めて自分が何をやっている時が一番楽しいと感じるか、考えてみたらいい。

エミール:私の場合は、太陽星座が射手座だから、「射手座的なこと」になるかしら。占いも執筆もそうですし、商業ベースであれこれ手広くやったり、「これはこうなんだ!」と人に主張することよりも、自分で「へ~、そうなんだ!」と発見して納得するのが何よりの楽しみ。今から思い返せば、このエンジン部(太陽・射手座)が一番、正しかったと思う。

愛:エミール先生は、自分なりに研究されたりするのが好きでしたよね。何らかの真実を発見して、自我が拡大していくことがうれしい。それは射手座の太陽の最たるもの。

エミール:ちなみに私、月の星座は牡牛座ですが……。

愛:月が牡牛座だということは、まさに「品の山」だよね。物質だから。

―太陽の大切さはわかるのですが、「月星座の示すものが、その人のエネルギーを奪う」というのが、今ひとつわかりづらいのですが……。

愛:牡牛座なら「I have(私は持つ)」だから、自分を金持ちに見せようとしたり、ゆったり人生を楽しんでいるように見せるとエネルギーを消耗する。射手座の月は「I understand(私は理解する)」がない、ということ。何も理解できないということが、飢えなのよ。自分なりに判断したもの、理解したと思ったものを相手に認めさせることが生きがいになる。

―でも、わかりづらいですね。自覚しづらいというか。

愛:月星座双子座には「I think(私は考える)」がない、つまり自分の考えがない。考える“ふり”はできても、「考える」とはどういうことかがわからない。でも「I understand(私は理解する)」はできるから、人の話を聞いて「なるほどー」とは思う。でも、「自分の考えとは何か」ということがわからない。

―「自分の意見を述べよ」と言われると、困ってしまうわけですね。

愛:どこからか借りてきた、他人の意見を言うとかね。そのことで月双子座の人は悩んでいると思うよ。そういえば、ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベ先生は月が双子座でしたね。ルネ先生は文章も素晴らしくお上手でしたけど、苦しかったはずだよ、絶対に。

エミール:一度に三つのものをパッパッパと貼り付けて、完成品に限りなく近いものを作るのは得意で、情報収集の力はすごかったですね。でも、すごく苦しかったはずよ。

愛:僕は文章を書く時に、何かを下調べしたことは一回もない。数字とか固有名詞とか、調べなくちゃいけないものは調べるけれど。

―愛先生は原稿やブログで長い文章を書かれることが多いですが、下書きはされるんですか?

愛:しない。だから同じことは一切、書けない。

―下調べも推敲もなく、何もないところから、あの熱量のこもった文章が出てくるのですか?

愛:むしろ「何もないところからしか、出ない」ということを知っているわけ。「あるもの」からは、すでに「ある」ことしか出ない。

エミール:すでにこの世にあるものを下敷きにしていては「あるもの」の限界を越えられない、ということを愛先生はご存じなのよ。

愛:だって、あるものはあるんだから、もう書く必要はないでしょう。

―それは、すごい境地ですね……。

愛:僕の場合、これは3ハウスの太陽(水瓶座)でやっているんだろうね。それに対して、月でやっていることは、後味が悪いんです、すべて。例えば、月が魚座なら本当は神秘のことなんか信じていない。直感とはどういうものかがわかっていないから、非常にそこに恐れを持っている。だから分かっているような演技をしているうちに、エネルギーが奪われていくんです。

エミール:そう、月があるところって、その「ふり」をしなくちゃいけないのよね。例えば、「私はこんなことをしてあげた」「こんなこともしてあげた」という月星座蠍座の人に、周りの皆が「立派ね、ボランティア精神にあふれているわね」なんて言うんだけれど、本当にボランティア精神のある人は、わざわざそんなことは語らないと思うのよね。

―あえて「ある」風にアピールせずにいられないところに、月の矛盾があるわけですね……。


◆太陽星座は「何があなたを元気にするのか」を教えてくれる


エミール:やっぱり愛先生は、太陽の意識で生きていくための12通りのシナリオを早々に作るべきですよ。

愛:そうだね。でも、太陽星座の資質は自分で獲得していかないといけないから、やっぱり「命がけ」くらいのことを体験しないと、なかなか出てこないんです。

エミール:確かにそうね。まずは自分を捨てない限り無理だわ。

愛:「捨てる」ということは、この世的なあらゆるものを捨てるということ。お金も体面も人もこだわりも……そうしてすべてを捨て去ると、命だけが残る。その段階までいかないと、意識は変わらない。「まだお金がある」「仕事がある」「薬で治る」なんて、この世的なものにこだわっているうちは、太陽が象徴するような「命だけ」の意識には到達できないんです。

―太陽とは「命だけ」の状態なんですね。

愛:「すべてを失った」と思った時に、命だけが残るのよ。

―その輝きが「太陽の輝き」ということですね……。

愛:だから普通の人は、なかなかそこまでたどりつけない。「あれもほしい」「これもほしい」なんて物質的なことを言っているうちは、本当の意味では太陽を獲得できない構図になっているんだよ、この世界は。

―どうしたら皆、本当の意味での「太陽」を獲得し、自分のものにすることができるでしょうか?

愛:そうだね……。たまたまやっているだけなんだけど、楽しくてしょうがない、時間が経つのを忘れてしまうという事柄(体験)には、やっぱり間違いなく太陽が絡んでいる。「喜び」の感覚があることは、すべて太陽なんですよ。それなのに「でも将来の不安があるから、こちらにしよう」なんて保身や安全を考えるのが月星座の働き。だから皆、間違えるんです。難しく考えなくても、その点を意識して物事を選択していければ、太陽はどんどん補給できる。

―太陽の根幹にあるものは「喜び」ということですか?

エミール:そうね、いわゆる5ハウス的な要素ですよね。太陽は獅子座の支配星だから。喜びや楽しみ、生命力にあふれること……。

愛:どんなに極悪人でも、「これをやっていると、おもしろくて仕方がない」ということがあると長生きするんですよ。もうそれは善悪なんてものを越えているから。結局、その線で生きていかないと、人生もつまらないと思うんだよね。

―本来、楽しいものですかね、人生は……。

愛:喜びだよね。そう思えると「苦しみさえも喜びである」という状態が生まれるわけです。大変なことは、たくさんあったとしてもね。

エミール:私この頃、こう思えるようになりましたよ、先生。「喜び」というのが分母で、上に乗っている「苦しみ」は分子。だから最後は分母が勝つ、って。

愛:なるほど。仮分数(分母と分子が同数、もしくは分子が大きい数)ってことはないんだ(笑)。

エミール:そうね(笑)。だから嫌なことがあった時は、意識的に、たったひとつでいいからいいことをする。お年寄りの手を引くでもいい。それを自分の喜びのために施そう、と思えるようになりました。

愛:それはね、先生が太陽・射手座だから。射手座が象徴するような、社会的正義がエミール先生の魂にエネルギーを与えるんですよ。やっぱり太陽なんです。僕の場合は水瓶座だから、人に悪く言われようが、自分が信じることを発言する、ということで元気になるんですよ。

エミール:あぁ、わかるわー(笑)。

愛:全部、太陽なんだよね。双子座ならやっぱり誰かに何かを伝えるとか、新しい情報を得ること。魚座ならこの世界の神秘や深い部分にふれることが、元気になるきっかけなんです。

―太陽の持つ、本当の力……太陽星座の意味が少しずつ分かり始めてきた気がします。これは『マイカレンダー』本誌でも、改めて特集を!

愛:そうですね。……あ、でもそろそろ時間だ、帰らなきゃ。実は僕、今日誕生日なのよ。
※取材は2019年1月末に行われました。

―ええええ!?

エミール:先生、おめでとうございます(笑)。

―まさに太陽回帰(ソーラーリターン)の日に、力のこもった太陽のお話を、ありがとうございました!


~完~

★番外編第1回「冥王星からの問いかけ」はこちら!


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マドモアゼル・愛
まどもあぜる・あい●水瓶座。1970年代のデビューから第一線で活躍し続けている、日本を代表する占星術者。西洋占星術の枠にとどまることなく、恒星占星術をはじめとする独自の占法を研究。
http://www.love-ai.com/

エミール・シェラザード
えみーる・しぇらざーど●射手座。1970年代にルネ・ヴァン・ダール・ワタナベに師事、西洋占術、東洋占術の双方を網羅する数少ない占術家。著書に『いちばんやさしい四柱推命入門』(ナツメ社)がある。
http://kaminosachi.com/

撮影/片岡 祥 聞き手/マイカレンダー編集部