◆占い業界の未来に光は見えるのか?

『マイカレンダー』で始まった連載「占い業界☆今号の3人」。
占い界で何らかの「共通項」を持つ3人にお集まりいただき、普段どんなことを話しているのか、こっそり聞き耳立てちゃおう!というのが企画コンセプトです。

創刊号では「若手男子占い師編」として、
SUGARさん、一樹さん、竹内俊二さん……にお集まりいただき、
番外編第1回は「占いの表現のあり方」をテーマにお話いただきました。

ここからは2018年末~2019年年明けに占いクラスタで盛り上がっていた「月星座問題」に言及。
そして「これからの占い、そして占い師のあり方とは?」という、壮大な問題にまで発展……!?
占い業界に何らかの形で携わる方は必読!!!です。

※この座談会は2019年2月初旬に行われました。

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◆月星座問題、それぞれの受け止め方


―そしてマドモアゼル・愛先生のブログに端を発した一連の「月星座問題」に関してです。愛先生の「月とは幻影であり、月星座が表すような資質は、その人には”ない”と考えるべき」「月星座を活かそうとすればするほどエネルギーを奪われる」という提唱は衝撃的でした。これに関して、SUGARさん、一樹さんはTwitter上で活発に持論を展開されていましたね。
※一連の流れは、いけだ笑み先生によるこちらのまとめをぜひご一読ください。

SUGARさん(以下 SUGAR):愛先生の提言は非常におもしろいなと僕も思っていて。「アイデンティティ」って言葉があるじゃないですか。この言葉は批評家の江藤淳が1967年に『成熟と喪失』という本の中で初めて使ったんです。日本は非常に母性が強い“母子密着型社会”、と。そして個人が近代的なグローバル社会で強くなっていくためには、母親の喪失ないし崩壊、いわゆる “母殺し”をしないと成熟できない、近代的自我を確立できない、と言っているんですね。
「母、ないし月的なものはまやかしだ。ごまかされてはならない」そして「太陽で目覚めて、前向きで、光り輝き進化した個人になっていきましょう」というのは、愛先生が人生の集大成として、そうした時代背景とともに感じられたんじゃないかなと。それで目覚める人とか、「あっ!」と思う人もいるだろうな、と思うんです。でも「人間は進化しなければならない」「近代化しなければいけない」という考え方にとらわれすぎていないかなというのもあって。

一樹さん(以下 一樹):僕の場合は、なんだかもともとの占星術が持つシンボリズムの多義性や豊かさを殺してしまっているんじゃないか、って思うんです。

SUGAR:一樹くんが言っているのは、例えば占星術をやっていると、どうしても複数の“私”がいる、という認識になると思うんですね。アイデンティティとして一本確立された自分、金太郎飴のような“私”があるんじゃなくて、いろんな“私”がいるよ、という。

―それは星座が12あり、天体が10あり、いろいろな側面があるということですね。

SUGAR:そう、だからアイデンティティを固定的に完成させるというイメージよりも、「多様な自分がいて良くね?」みたいな方が、占星術の世界観に合っているんじゃないか、ということだと思うんですね。

一樹:「月」っていう象徴一つとっても、いろんな切り方ができるのに、それを「まやかしだ、死の天体だ」って言いきってしまうのは、月の多義性を殺してしまうんじゃないかと。あとやっぱり12サインの語り方にしても「水瓶座が月の人は天才性がないのです!」「射手座の月の人は理解力がないのです!」とか、一つの言葉でズバッと切り取りすぎちゃってて。

SUGAR:この件に関しては、いろいろな受け取り方があるよね。一樹くんのように「占星術的豊かさをあんまり運用できていないんじゃないか」というのもあるし、「日本人の成熟の問題を愛さんが端的に、ドラマティックな部分も含めて表現してくれてる」というのもあるし、「個人の問題として、愛さんがそうせざるを得なかった部分があったのかもしれないな」というのもあるし。

一樹:だとしたら「こういうスタンスで語りますよ」ってカッコに入れておいてほしい。あれに盲目的に乗っかっている人がたくさんいるから「僕は違うと思います」と言って批評することで、相対化できないかなと思ったんだよね。

SUGAR:もちろんね、そうして怒ってみせるのはいいことだと思う。でもだったらやっぱり、対論を出して、そういうリアクションを超えたものをやっていこうよ、せっかくだから。

―今回の一件は、若手世代の皆さんのリアクションが新鮮でしたね。往年の、それこそ『マイバースデイ』世代は「愛先生、また新しいことおっしゃってるわ~」という感じで受け止めていた人が多かった気がします。

SUGAR:愛先生のキャラクターとして認識してる世代と、そうじゃない世代がありますよね。だからTwitterで流れてきてビックリして、ショックを受けたっていう人たちもいると思います。でもそろそろこれまでの占星術に対して、違う言い方をしてもいいんじゃないかという、「正・反・合」の弁証法的なお題を出された感じですよね。「反」って言ったから「正・反・合」の「合」を出そうぜ、みたいな。確かに、この月星座問題は、とてもいいお題で盛り上がりましたよ。

一樹:盛り上がったよね。

―最近ないくらい占い界隈が、わーっとなりましたね。ちなみに射手座木星の時には、みんな炎上を恐れなくなると松村潔先生が言っていました。

SUGAR:確かに、同じ「月」の問題っていうフィールド上でリアクションが起きて、こうして議論ができるっていうのは、皆でサッカーしてるみたいで非常に楽しいです。竹内さんは月星座問題ってどうです?

竹内俊二さん(以下 竹内):僕は人それぞれの考え方があるので干渉しない、というスタンスです。僕はその占星術の根幹となる象徴っていうものはあるけれども、それをどうやって解釈するか、どのように扱っていくかはそれぞれだし、いろんな人がいて、聞く側も選ぶことができるから、僕が正しいとか、僕が代表とかっていうことを言えないんです。だから愛さんの言ってることが響く人もいるし、違うなって感じる人もいるし、だからそれぞれかなっていうのが基本姿勢です。

SUGAR:そういう意味では、「いろいろあるよね」っていうのを提示していかないと、っていうのはありますよね、特に若い世代は。


◆占い師の“生きづらさ問題”を問う


―占い雑誌『ミスティ』(実業之日本社)が休刊したのが2011年で、その後、占い師さんの活動のフィールドはネット上に広がっています。その中で占い業界にもどんどん新しい動きが出始めているような気がしますね。

SUGAR:今年から臨床心理士が、公認心理師になっていくじゃないですか。これは「医療の外で何ができるか」ということが問われている時代なんだな、と思う一方で、じゃあ、占いというのも医療の外で何ができるか、ということを具体的に考えていかなきゃいけないな、とも思うんですね。占いのクライアントの中には特に悩んでいる訳ではない人もいれば、心の病いを抱えてしまっている人、死にたいと思ってくる人もいたりする。そんな時、例えば自殺防止やターミナルケア(終末医療)と占いはいかにリンクできるか?あるいはできないか、ということが、もうちょっと議論されてもいいなと思うんですね。

―それって……可能なんでしょうか?

SUGAR:何かしらできる余地があるとすれば、考えてみたいですよね。例えば、スー・トンプキンスさんが「認知症と海王星」について、占星術家として言及されていましたけれど。実際にそこにある苦しみと星がどうリンクするのか、それが社会において何か問題解決のきっかけにならないか、と。占い師個人の「商売」としての側面を越えて、社会に対して何ができるのかが問われている時代なんじゃないかなと思います。

竹内:でも、そういう議論ができる人って、ゆとりのある人ですよね。基本は自分のことのために宣伝したい、自分が儲かったらOKみたいな人が多い。

SUGAR:多分、それが一つの問題だと思うんです。「そういう議論をすることも利益やゆとりになるよ」ということになったら、また違うんじゃないですか? なぜかというと大前提として、占い師って全然お金にならないし、食べていくのにも限界があるんですよ。つまり「占い師の生きづらさ」ということも、一つ問題だと思うんです。

―そ、それはちょっと重要な問題ですよ!(焦)

SUGAR:もちろんクライアントや一般の人の生きづらさも大事なんですけど、占い師も生きづらいですよ。竹内さんの現実的な意見っていうのは、占い師の生きづらさの反映でもあると思うんです。大変だもん、だって。

―占い師さんって、生きていくの大変ですか?

SUGAR:大変ですよ、めちゃくちゃ。

―どうやって生きていかれてるんですか、皆さん……。

SUGAR:みんな昼間に別の仕事したりとか……言わないだけで(笑)。ただそれは、恥ずかしくて言わないんじゃなくて、大事な経験としてもっと言っていってもいいと思うんだよね。今はもう「自己実現」の時代じゃなくて、「サバイブ(生き残り)」の時代なんだ、という意味で。

一樹:本当に、サバイブの時代。自分でtwitterで発信して、フォロワーを増やして……って。

竹内:僕は今のところ、占星術を生業とすることでの生きづらさは、あまり感じてないです。ビジネス的に目立ってガンガン儲けよう!という発想があまりないというか。それよりも、目の前の頼まれた仕事をきちんとこなさなくてはという意識が強くて、そこさえちゃんとしていれば、生活は必ずうまくいくと言う謎の信念があります。すごく楽観的なんですね。もちろん、お金はあると嬉しいですが。

SUGAR:うん。だからそこで占い師の共通利益を作れれば、「稼ぎ」ということで還元していけると思うんだけど。そういうことを議論することが皆の共通の利益になるという認識ができれば、そこに結束が生まれて、「こういうことをしてみよう」って流れができて、その成果が分配される、となれば。でもそれを一部のお金持ちに頼ったり、ただ周りに仕事をつくってもらってアイデンティティを保とうとするだけでは、それこそいつか生きていけなくなるかもしれないし、ますます生きづらくなってしまう。例えば、「ウラナイ・トナカイ」さんとかも近いですけど、昔でいうギルド(同業者の集まり)のようなことを、もっとやっていきたいな、と。だからこういう占い師が集まる座談会のような企画っていいと思ったんですよ、まさに。

一樹:でも科学だったら「エビデンス(根拠)は?」と問えるけど、占いって、言ったもん勝ちになっちゃう。それに映画や文学作品のように、過去の偉大な作品と比較しての批評文化とかもないし。それで「クライアントにウケさえすればOK」「売れさえすればOK」だと、客観的な視座を失って、本当にカルトみたいになっちゃう危険性を常に孕んでる。

竹内:占星術の根拠が分からないクライアントからすれば、極端な話、完全にデタラメを言ってもわからないですよね。そこは占う側の良心頼みになってしまっている。危ういところだと思います。

SUGAR:そこは、しっかりとした指標を作る必要はあるかもしれないね。例えば、海外でいうと占星術で貢献したら表彰されるシステムがあったりする。

一樹:芳垣宗久先生が昔、『GALACTIC CORE(ギャラクティック・コア)』って雑誌を出してたでしょ? ああいうのがあるといいよね。

―なるほど……。占い師さん同士をつないたり、きちんと評価する指標を設けたり、占い師という仕事をきちんと下支えして「生きづらさ」を軽減するような何かを『マイカレンダー』がやっていけたらいいのかもしれませんね。

一樹:じゃあ、マイカレ賞を作ったら?

―しょ、賞を……!? 占い界で何かいいこと、おもしろいこと、素晴らしいことをした方を表彰する?

竹内:(笑)。

SUGAR:いいじゃないですか(笑)。

一樹:うん!

―占い業界の未来に、ほんの少し光明(!?)が見えた気がしたところで、本日はお開きです! ありがとうございました!


~完~

★番外編第1回「20~30代男子が占いを志すきっかけとは」はこちら!

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SUGAR
しゅがー●獅子座。月は牡羊座。1983年生まれ。2009年より占い師として活動。メンズ占い師ユニット「not for sale.」メンバー。
http://astro-ragus.com/

一樹
かずき●魚座。月は射手座。1984年生まれ。現在は「原宿占い館 塔里木」に所属。ノイズミュージシャンとしても活動中。
https://twitter.com/puntukuta

竹内俊二
たけうちしゅんじ●射手座。月は牡牛座。1979年生まれ。2011年から活動。現在は初心者からプロまで楽しめる占星術講座も開催。
https://nekochan-pion.hatenablog.jp/



場所「BAR アイラ島銀座」
現地で買い付けたスコッチウィスキーを豊富にそろえるバー。気取らない雰囲気の中で、「本物」をゆっくり味わえる。
東京都中央区銀座1-19-12
http://www.islay.tokyo/

撮影/石田健一 聞き手/マイカレンダー編集部