陰陽寮の4つの官庁

こんにちは。
陰陽道・陰陽師研究家の高橋圭也です。
前回は、陰陽道のルーツについてお話しました。
今回は、陰陽寮の4つの官庁と、陰陽師の実際の活動についてもお話していきます。


陰陽寮(おんみょうりょう)について

古代中国や日本の支配階級の人々は地上を支配する権限を天から委託されたものと考え、天体の星々の不自然な動きや地上の自然災害等は天が支配階級の人間に示す天の意思である、としていました。
さて古代日本では様々な自然現象は将来起る国家的事件の前兆として、その前兆を機にその事件の詳細を知るために占いや暦が必要であり、また占いや暦を未来の国家的出来事を予測する一種の科学とも考えて「占いや暦は国にとって非常に重要だから、国が直接管理すべきもの」と考えて国家的な占い機関を必要としたのです。
その際に古代日本が手本にしたのが、中国の唐王朝の国家的占い機関の太史局(たいしきょく、天文の現象を元に占い、暦を作り、漏刻で時刻を報知する機関)と太常寺・太卜署(たいじょうじ・たいぼくしょ、卜筮で占う機関)なのです。
日本ではこの唐の2つの国家的占い機関を統合し、天文道(てんもんどう)、陰陽道(おんみょうどう)、暦道(れきどう)、漏刻(ろうこく)の4つの官庁を包摂する「陰陽寮」を創設し(道は、律令制で官庁の意味です)、天皇に関することを行う中務省(なかつかさしょう)に帰属させました。

では、以下にこの陰陽寮の4つの官庁について簡単に説明します。

1.天文道……天文道は天空の星々を肉眼で観て(ホロスコープのような占星盤は使いませんでした)、どの星が天空上でどの位置を占めてどんな輝きや色をしているか、また惑星同士がどんな状態になっているか、などを観測して国家や軍事、政治の状態を占う官庁です(安倍晴明は天文道の長の天文博士でした)。

2.陰陽道……陰陽道は卜筮相地(ぼくぜいそうち)を行った官庁です。この卜筮は易占ではなく、六壬式占(りくじんしきせん)という占いで諸事を占うことであり、相地は風水、または都や邸宅として選んだ土地に陰陽師が出かけ、そこに式盤(しきばん、六壬で占う際に使う道具)を置いて土地の良否善悪を六壬で占うことです。

3.暦道……暦道は古代中国の風水書や暦術書などを参考に暦を作る官庁です。ここでは天皇や皇族、上級貴族のために陰陽師が暦を1枚1枚手書きで筆写して配りましたが、当時の暦は現在のように日付だけを記すのではなく、暦注(れきちゅう)という毎日の占いやその吉凶などを記したものです(具注暦、ぐちゅうれき)。

4.漏刻……漏刻は仕丁(しちょう)という雑用係の中から選ばれた守辰丁(しゅしんちょう、時守・ときもり)が漏刻(水時計)を警備し、さらに一定の時刻になると陰陽寮の中の鐘を打って時刻を知らせる官庁です。また当時の水時計は階段状になった器の一番上に水を入れ、だんだんと水が流れ下った一番下の器に設置した浮きの目盛が溜った水の量で上下するもので、その目盛の高さで時刻を計ったのです。



占いと暦に従うことがステータス


さて古代〜江戸時代までの支配階級の貴族や武士の人々が陰陽師の占いや暦を必要としたのは、昔から占いや暦が天の意思を示すものとされたので、それに従うことが地上を支配することを許可した天の意に沿うもの、という伝統があったからです。
例えば平安時代の貴族は朝起きるとすぐ暦を観て、その当日の暦注の暦占いの吉凶などを確認し、その日の行動の指針としましたが、これは暦の暦注に従うことが天の意に沿い、暦注の吉日が天の福徳の気を享受するパワースポットの日とされたためです。
さらに当時の貴族たちは有職故実(ゆうそくこじつ、礼式や法令・官職・服装等の古来からの決まり事)を守り、それにこだわることが支配階級の人々のステータスであり、有職故実や占い・暦に従うことが天の意に沿い、その支配権力を維持するものと考えていました。



怪異について


怪異は「けい、もののさとし」とも読み、現代の映画やドラマ、物語、小説、アニメのような心霊怪奇現象ではなく、当時の人々が日常で滅多に起こり得ない現象と考えた「建物内に鳥や蛇が入ってきた」や「馬が暴走した」「鼠が食物をかじった」等のことを指します。
よく「陰陽師は怪異現象に対処した」とする人がいますが、実は怪異は将来起こる事件の前触れ、前兆であって、この怪異が起きた発生時間を元に陰陽師が将来起こる事件の詳細を六壬式占で占い、その六壬の四課三伝(しかさんでん)から物忌などを行う時期とその日数を出していたのです。
実は、歴史的に実在した安倍晴明の六壬式占文(りくじんしきせんもん)という占いの報告文が現在も残っていますが、その文章で「建物に鳥や蛇が入ってきた」とか「鼠が食物をかじった」等を怪異としているので、晴明自身が怪異を怨霊や悪霊等の心霊怪奇現象と考えていなかったことが分かります。そして陰陽師は六壬式占で占った後に、怪異現象が起きた場所を祓う怪所の祓い(かいしょのはらい)を行いました。
この怪所の祓いは平安時代の延喜式(えんぎしき)という法律文に「陰陽寮は内裏の建物や敷地の害気を鎮める鎮害殿(ちんがいでん)を行うべし」とあって、陰陽師は現代の寺や神社のように相談してきた人間に対しての祓いを行わず、ケガレた事象や怪異が起きた建物や場所を祓っていたのです。
ですから、陰陽師は浄霊や除霊、悪霊祓いのような人に対する直接的な祓いを行うことはありませんでした

今回はここまでになります。

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・プロフィール
高橋圭也(たかはしけいや)
ドラマ「陰陽屋へようこそ」「陰陽師」、映画「陰陽師」等の陰陽道指導を行う陰陽道・陰陽師研究家。
世界一のSEIMEI(安倍晴明)の剣印ポーズの生みの親。神道霊学研究家。兵法学研究家。
明階神職資格取得。
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